着ぐるみの重さは約10キロ。「教授から心配とお叱りをいただいたので、展示3日目からは1時間に1度休憩を挟んでいます」と作者のチワ族さん。【GW特別再掲 】
ゴールデンウィーク中にぜひ読んでほしい、2024年前半特に面白かった話題を紹介しています(初出:2月1日)。銀色の髪の毛、褐色の肌にとんがった耳の少女が、巨大な爪がついた動物の毛皮を身につけています 。
ファンタジーの世界に出てくるキャラクターの等身大フィギュアかと思いきや、ゆったりとポーズを取って動き出しました。東京都美術館でのユニークな展示がSNSで話題になっています 。
作者が自ら着ぐるみに入る「生きる彫刻」に注目集まる
1月28日から2月2日まで開かれている東京藝術大学の卒業・修了作品展の「貌(ぼう)」という作品です。着ぐるみを製作した同大学彫刻科4年生の「チワ族」(@Chihua_Zoku)さんが、自ら中に入り、実演するという内容になっています 。
X(旧Twitter)では以下のような反響を呼んでいます。 💬 「まさに生きる彫刻 … というか生命でした」 💬 「ゲームの世界から飛び出してきたのか思うくらい」 💬 「『この仕草を含めて作品だ』と言わんばかりのクリエイター根性を感じる」1月30日に現地を訪れたところ、圧巻の存在感に地下ギャラリーでの展示には、常に人だかりができており、多くの人が写真を撮っていました。(※東京藝大によると動画撮影はNGでした)あとで作者のチワ族さんに取材したところ、着ぐるみは約10kgもありますが、「体力的には問題ありません」とのこと。展示2日目までは通しで演技していたそうですが、「教授から心配とお叱りをいただいたので、展示3日目からは1時間に1度休憩を挟んでいます」と報告しました。「体力の続く限りは生きた姿をお見せしたい」と意気込みを語っていました 。
「身を守る鎧や仮面として他者の姿をまとうことがこの作品のテーマ」と作者のチワ族さん
BuzzFeed Japanではチワ族さんに、この作品を作った経緯について話を聞きました。以下は一問一答です。――今回の着ぐるみは「ハクア」のフルスーツver . ということですが、どういった経緯から制作されたものでしょうか?着ぐるみの両肩をはだけさせた姿は、所属しているfurryのサークルのマスコットキャラクターの案を考えた時に発想しました。残念ながらそのキャラクターは採用されませんでしたが、アイデアを気に入っていたので持ち帰り 、 卒業制作で作る作品として、種族や雰囲気、テーマを新たに設定し再構成しました。「ハクア」は竜人の女性で、灰色の獣のはらわたを裂いて、その皮を着ています。裸のまま猛獣の毛皮に脚を通した姿をしていて、着ぐるみによる身体の拡張と、外見と内面の人物像の表現、身を守る鎧や仮面として他者の姿をまとうことがこの作品のテーマです。1月初めにあったJMoFというfurryのイベントで、ヘッドとタイツに私服を着たハーフスーツver . を出していたため、卒展で出した完全体の姿をフルスーツver . と呼んでいます。――制作期間はどれくらいかかりましたか?実制作期間は約半年です。原案となったイラストを昨年の2月に描いていて、昨年4月からヘッドの原型制作に入りました。前期の終わりから夏休みにかけて、ハクアのヘッドの構造の試作として別のキャラクターを制作しています。顔を重要視していたので、ヘッドの制作に最も時間をかけています。――実際に中に入って「動く彫刻」として展示しようと思ったきっかけはなんですか?着ぐるみを展示するうえで、動いている姿を見せることは私にとっての必須条件でした。着ぐるみは中に人が入って、動いてこそが本来の姿だと思います。生き物と対峙した時の未知の感情やときめきを伝えたいです。体力の続く限りは生きた姿をお見せしたいと思います。――会期中は1日に何時間くらい実演されていますか?また今後の実演予定はどうなっているでしょうか。パフォーマンスは9:30〜17:30の開館時間の約8時間です。1日目と2日目は通しでやっていましたが、教授から心配とお叱りをいただいたので、展示3日目からは1時間に1度休憩を挟んでいます。――重さは何kgくらいでしょう合計約10kgです。片足が約2.5kgずつで、あとはボディの重さです。すり足で移動していることと、約2mある尻尾の大半が接地しているので、さほど重いとは感じません。――何時間も実演しているとなると、体力的に厳しくないか心配になったのですが大丈夫でしょうか?体力的には問題ありません。山岳部で重いものを背負って長時間歩くトレーニングをしていたので、そこで培った体力と体幹が活きていると思います。酸欠と脱水がよく心配されますが、ゆっくり動くことで深い呼吸を一定に保つことと、パフォーマンス直前と終了後に水分を沢山摂ることで対応しています。汗をかくのでパフォーマンス中にトイレに行きたくなることはありません。――振り付けで参考にしたものはありましたか?動きの参考にしたものに関してはは全くの素人で恐れ入りますが、歩き方は能のすり足を、謎の踊りの振り付けは「祈り」や「儀式」のイメージです。しなやかさと力強い流れを意識して動いています。――SNS上では漫画『メイドインアビス』のナナチやファプタを連想したという声もありましたが … … その意図は全くありません。――何か影響の受けた作品・キャラクターはありますか?私が大きく影響を受けた作品は、はつが竜穂さんの自主制作アニメ「纏の国のガルダ」です。中学のときに出会った作品で、登場人物たちの心が通いあうかのような舞のシーンが印象的でした。この作品に出会って以来、民族的な力強さと静謐さを備えた雰囲気と、濃い色の肌と薄い色の髪の組み合わせを好んで描いています。――これまでもチワ族様の作品は、擬人化された動物たちが多く見受けられますが、どんなところに魅力を感じますか?見た目の自由度が高いところです。人体そのものに魅力を感じているので、オリジナルキャラクターたちの身体は、人間の骨格や筋肉をベースに構成することが多いです 。
【 展示のお知らせ】フルスーツver . のハクアに会いに来てください🩶【タイトル】貌【場所】東京都美術館 地下ギャラリー(学部彫刻科)【期間】2024年1月28日(日)~2月2日(金)pic.twitter.com / W1cZAoPqu0